2018-01-01から1年間の記事一覧

【三題噺】「雪」「鍵盤楽器」「宝物」

部屋の片付けをしていると、クローゼットの中から小さい頃の大切な物入れの箱が出てきた。片付けの手を止めて箱の中を見る。箱はそこまで大きなものではないので、細々としたものしか入っていないが、それらを見ていると昔の記憶が蘇ってきた。 小さい頃の私…

【三題噺】緑色 狼 先例のない幼女

目を開けると薄暗い廊下に立っていた。辺りは暗いから、きっと夜なんだろうと幼女はぼんやりと思った。ここはおばあちゃんが前入院していた時にお見舞いで来た病院に雰囲気が似ている建物のようだ。 さっきまでお母さんと家の寝室に寝ていたはず。なのにここ…

バイクで1人旅した話

バイクで九州を(ほぼ)1周してきました。 熊本から出発し、反時計回りに鹿児島→宮崎→大分→福岡→佐賀と回ってきました。長崎は台風と進路が被ってしまったので断念し、ほぼ1周の形になりました。 知っている人が誰もいない、今まで行ったことのない場所を5…

【三題噺】「水」「リボン」「ねじれた小学校」

ジャンルは「純愛モノ」 水曜日が憂鬱だと感じなくなったのはいつからだろう? 金曜日が寂しく、月曜日が待ち遠しくなったのはいつからだろう? 答えがわかりきっている自問自答を私は飽きもせずに笑顔で答える。 彼氏ができたのだ。 …彼氏ができたのだ! 世…

Lesen

「本を読みなさいと言われますが、なぜ本を読む必要があるのでしょうか?」と質問を受けたことがある。 あなたは人に聞かれたときにどう答えますか? 私はその時「新しい知識を取り入れて自分の成長に繋げるためだよ」とか適当に答えたと思うが、本音は「そ…

【三題噺】本 残骸 輝くかけら

私は部屋の本棚にあったすべての本を一心不乱に破いていた。 理由は自分ではっきりとわかっている。ただの嫉妬だ。小説家になった同級生の本が賞を取って新聞に載ったことで、輝かしい人生を歩む奴と、ふらふらと職を転々とし、素直に奴の成功を祝福できない…

【三題噺】光 井戸 いてつく運命 

光 井戸 いてつく運命 ジャンル「偏愛もの」 冷たい井戸の底から今日もあなたのことを考える。この井戸は暗く、じめじめとしている。どうしてこの井戸の中にいるのか、理由はもう分らない。井戸の上を日が通り、月が通る。その繰り返しが延々と続くのみだ。 …

【三題噺】雨 偽物、偽者 腹巻き

雨 偽物、偽者 腹巻き 誰も通らない夏の田舎道。突然来た土砂降りの夕立の中、ベンチに座ってぼうっとバスを待っていたら、ずぶ濡れになりながらやせ細った男が停留所に駆け込んできた。 軽く会釈をして視線を外に向け、まだ来る気配のないバスを待っている…

【三題噺】春 ガイコツ 最高のメガネ

春 ガイコツ 最高のメガネ ジャンル「童話」 あらゆるものがメガネで出来ている不思議な国がありました。人々はメガネのパンを食べ、メガネの服を着て、メガネの車に乗って仕事に出かけます。 ある日、メガネの水晶で占いごとしていた占い師のおじいさんが、…

Opportunité

社会人になって初めての誕生日、一日を振り返っての感想は「しんどい」の一言に尽きる。 大人しく酒飲んで寝ればいいのかもしれないが、高校時代に好きだった物書きさんの名前を思い出したので、いい機会だとつらつら昔の話を垂れようと思った。 小さいころ…