【三題噺】春 ガイコツ 最高のメガネ

春 ガイコツ 最高のメガネ    ジャンル「童話」

 

 あらゆるものがメガネで出来ている不思議な国がありました。人々はメガネのパンを食べ、メガネの服を着て、メガネの車に乗って仕事に出かけます。

ある日、メガネの水晶で占いごとしていた占い師のおじいさんが、こんなことを言いました。

 

 「最高のメガネが生えてくる木が見つかった。これをかければどんな願いも叶うが、その木のもとに辿り着くには数多の試練を越えなければいけない。」

 

 たくさんの人が試練に挑み、脱落していく中、貧しい村から来た青年はなぜか試練をすいすいと突破していきます。彼に対しては迷路の仕掛けも、刀を持ったガイコツも、なぞかけをするスフィンクスも危害を加えません。青年はメガネを買うお金もないほど貧しかったため、メガネに反応して動く仕掛けが効果をなさなかったのですが、人々は「彼はなんて貧しいのだ」と不憫に思うだけで、だれも真似しようとは夢にも思いませんでした。

 

 真冬の雪山を踏破し、1番乗りで最高のメガネの生える木に辿り着いた青年は首を傾げました。ひとつだけ生っているメガネがあまりにも小さすぎます。

 木の周りを歩いた青年は何かを見つけると、「なるほど」とつぶやいて何も取らずに来た道を引き返しました。

 

 木の枝に小さな看板が吊るしてあり、こう書かれていました。

「メガネは 春に できます。」